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博清会マニュアル

予防接種(同時接種)

生ワクチン・不活化ワクチンの同時接種。医師・看護師・受付事務の全員向け

2026年8月・第1版

最初に覚える、この3つ

  1. 1同じ日に何本打ってもよい本数の上限はありません
  2. 2日をずらすルールは1つだけ「注射の生ワクチン → 次の注射の生ワクチン」は27日以上あける。それ以外は制限なし
  3. 3打つ場所を分ける・混ぜない同じ腕・同じ足なら2.5cm以上はなす。1本の注射器に2種類を混ぜるのは絶対禁止

当法人はこれまで「生ワクチンどうしの同時接種はしない」運用でした。これを改め、生ワクチン・不活化ワクチンを問わず同時接種を行います。接種してよいかを最後に決めるのは医師です。迷ったら自分で決めず、院長または予防接種担当医に相談してください。制度はよく変わるので、使う前に最新の通知・添付文書(ワクチンの説明書)も確認します。

第2章見るのは「生ワクチンか、そうでないか」だけ

ワクチンは作り方で何種類にも分かれます。でも現場で大事なのは1本の線だけ。「生ワクチン」か「生ワクチンではないもの」かです。この線が、接種間隔のルールと、副反応がいつ出るかを決めます。

このワクチンは? 生ワクチン 生ではないもの 弱くした本物の病原体 MR・水痘・BCG・ロタ など 不活化・トキソイド・mRNA 組換え・結合型 など全部
不活化・トキソイド・多糖体・結合型・組換えタンパク・mRNA は、すべて「生ではないもの」としてひとまとめでよい。
生ワクチン生ではないもの(不活化・mRNA など)
中身弱らせた、生きた病原体殺した病原体・その一部・設計図(mRNA)など
体の中で増える?増える増えない
副反応が出る時期数日〜3週間後(遅れて出る)当日〜翌日(mRNAは当日〜2日)
妊婦さん接種できない(禁忌=打ってはいけない)接種できるものが多い(mRNAは接種できる)
免疫が弱い人原則できない(専門医の判断が必要)接種できる
次の接種までの間隔注射生 → 注射生 のときだけ27日以上制限なし

mRNAワクチン(新型コロナのコミナティ・スパイクバックス・コスタイベ)は、病原体を使わず「設計図」だけを届けるワクチンです。生ワクチンではありません。

生ワクチンは3種類。27日ルールは「注射」だけ

注射 飲む 鼻にスプレー MR・水痘など ロタ フルミスト 27日ルールあり 間隔の制限なし 間隔の制限なし
ここはとても間違えやすいところです。
注射の生ワクチン
(27日ルールの対象)
MR(麻しん風しん)/麻しん単独/風しん単独/水痘(みずぼうそう)/おたふくかぜ/BCG(結核)/帯状疱疹の生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)/黄熱(渡航用)
飲む生ワクチン
(対象外)
ロタウイルス(ロタリックス・ロタテック)
鼻の生ワクチン
(対象外)
フルミスト点鼻液(2〜18歳)
ロタは始める時期に厳しい期限があります。初回は生後14週6日までに行うことが強く勧められています(それより遅いと腸重積症〈腸が腸に入りこむ病気〉のリスクが上がるため)。予約を受けるときに、必ず日齢(生まれてからの日数)を確認します。
フルミストを「生ワクチンだから4週間あける」と案内しない。生ワクチンですが注射ではないので、前後の間隔の制限はありません。

同じ病気で「生」と「生でない」の2種類があるもの

病気生ワクチン生ではないもの注意
帯状疱疹乾燥弱毒生水痘ワクチン(皮下・1回)シングリックス(筋注・2回)免疫が弱っている人に生は使えない。定期接種の対象・費用も別
インフルエンザフルミスト点鼻液(2〜18歳)注射のインフルエンザワクチン鼻は生だが間隔の制限なし。ぜんそくの子・免疫不全の人には鼻を避ける
水痘・帯状疱疹水痘ワクチン(子どもの定期接種)―帯状疱疹の生ワクチンと同じ成分で量が違う。指示書を確認
受付・看護師へ:「帯状疱疹ワクチン」「インフルエンザワクチン」とだけ書かれた予約や指示は、どちらの製剤かを必ず確認します。名前だけでは生か生でないか分かりません。

第3章接種間隔のルール(2020年10月から)

注射の生ワクチン → 次の注射の生ワクチン は 27日以上あけるそれ以外の組み合わせは、すべて間隔の制限なし(翌日でも、同じ日でもよい)。
1本目 0日 翌日〜27日目 28日目〜 OK 同じ日なら 打てない 打っても無効接種になる OK 4週間でリセット
「同時ならOK/中途半端にあけるのがいちばんダメ/4週間たてばリセット」

なぜ「同じ日ならよくて、日をずらすと27日」なの?

からだ からだ(警戒中) 同じ日 門が開いている→両方育つ 数日〜3週間後 門が閉まっている→育たない
インターフェロン(ウイルス全般が増えるのを抑える物質)が「門」の役目をします。
  1. 生ワクチンは、弱いウイルスが体の中で少しずつ増えることで免疫をつけます。
  2. 1本目が増え始めると、体はインターフェロンを出します。これがウイルス全般を通さない状態を、およそ数週間つくります。
  3. その間に2本目の注射生ワクチンを打つと、2本目は増えられず、免疫がつかないおそれがあります(干渉=ワクチンどうしのじゃま)。じゃまが消えるまでがおよそ4週間なので「27日以上」です。
  4. インターフェロンが十分に出るまでには数日かかります。だから同じ日に打てば、じゃまし合いません。
  5. 不活化・mRNAは体の中で増えないので、じゃまもされず、じゃまもしません。ロタ(飲む)とフルミスト(鼻)は、腸や鼻の粘膜という「別の入口」ではたらくので対象外です。

「27日以上」の数え方

打った日は数えず、翌日から27日を数えます。覚え方はこれです。

4週間後の同じ曜日から打てる例:4月1日(水)にMR → 4月29日(水)以降に水痘OK。
例:9月10日(木)に水痘 → 10月8日(木)以降におたふくかぜOK。
「1か月後」で数えない。月をまたぐと日数がずれます。必ず日数か曜日で計算します。電子カルテの次回予約機能を使うときも、出た日付を目で確認します。

早見表

前に打ったもの次に打つものあける期間
注射の生ワクチン(MR・水痘・おたふく・BCG など)注射の生ワクチン27日以上
注射の生ワクチン飲む生・鼻の生・不活化ワクチン制限なし
飲む生ワクチン(ロタ)すべてのワクチン制限なし
鼻の生ワクチン(フルミスト)すべてのワクチン制限なし
不活化ワクチン(すべて)すべてのワクチン制限なし
新型コロナワクチンすべてのワクチン制限なし

要注意:同じワクチンの2回目・3回目は別のルール

ここまでは「種類の違うワクチンどうし」の話です。同じワクチンを決められた回数打つときの間隔は、ワクチンごとの決まりに従います。こちらはゆるくなっていません。

五種混合・四種混合初回3回は20日以上(標準は20〜56日)。追加は初回が終わってから6か月以上
B型肝炎1回目→2回目は27日以上。1回目→3回目は139日以上
水痘1回目→2回目は3か月以上(標準は6〜12か月)
MR1期と2期は年齢で決まっている(1歳/小学校入学前の1年間)
ロタ27日以上
シングリックス(帯状疱疹)2か月後(遅れても6か月以内に2回目)
日本脳炎初回2回は6日以上(標準6〜28日)。追加はおおむね1年後

第4章同時接種とは・何本まで・禁止事項

同時接種とは、1回の受診で2種類以上のワクチンを、それぞれ別の注射器で、別の場所に打つことです。はじめから1本にまとめて作られた「混合ワクチン」(五種混合など)とは違います。

A B 1ワクチン=1注射器 1本の針・別の場所へ A+B 混ぜるのは禁止 効果が落ちるおそれ

1日に何本まで?

医学的な本数の上限はありません。必要なら1日に5〜6本を同時に打ってかまいません。ただし当法人では、次のように運用します。

  1. 本数にかかわらず、医師が「必要と認める」ことを予診票か診療録(カルテ)に書く。予防接種法施行規則で、同時接種は「医師が特に必要と認めた場合に行うことができる」とされているため。医師の判断と記載は必須です。
  2. 4本以上になるときは、前もって(予約時か予診時に)保護者へ本数と場所を説明し、同意をもらう。
  3. 保護者が本数を減らしたいときは、無理に説得しない。重症化しやすい病気を優先することを説明して調整する。

なぜ同時接種をするの?

日本小児科学会は2011年に同時接種を正式に勧めています。同時接種で効果が落ちることはなく、重い副反応が増えることもありません。打った本数の分だけ、それぞれの場所に赤みなどが出ることはありますが、1か所あたりの強さは1本ずつ打つときと同じです。

同時接種でやってはいけないこと

  • 1本の注射器に2種類以上を混ぜる(効果が落ちる・予想外の反応のおそれ)
  • 同じ注射器・同じ針を使い回す(感染のおそれ)
  • 同じ場所に重ねて打つ(反応が重なって強くなり、原因も分からない)
  • 打った本数・場所を記録しない(副反応の原因が分からなくなる)
  • 注射の生ワクチンどうしを27日未満で打つ(無効接種になる)

かならずやること

  • 1ワクチン・1注射器・1針
  • できるだけ別の場所(右腕・左腕・右足・左足)に分ける
  • 同じ腕・足なら2.5cm以上はなす
  • どのワクチンをどこに打ったか、区別して記録する
  • 医師が「必要と判断」と記載する

第5章接種当日の流れ 10 STEP

安全のカギは「順番を決めて、毎回同じようにやる」ことです。全院共通の手順です。

母子健康 手帳 接種券 (予診票) 健康 保険証 お薬 手帳 +「熱を測ってきてください」「肩や太ももを出しやすい服で」
STEP1:予約のときに案内する持ち物
STEP1予約・事前案内受付事務
  • 打つワクチン名と本数を予約時に決め、予約票に書く。
  • 母子健康手帳・接種券(予診票)・健康保険証・お薬手帳を持ってくるよう案内する。
  • 「当日は熱を測ってきてください」「肩や太ももを出しやすい服で」と伝える。
  • 前回の注射生ワクチンの日付を見て、27日以上あいているかを予約の時点でチェックする。
STEP2受付・書類の確認受付事務
  • 予診票の書きもれと、保護者の署名(本人の手書き)を確認する。
  • 母子健康手帳で接種歴を見て、予約内容と合っているか確認する。
  • 接種券の対象年齢と有効期限を確認する。
  • 少しでも合わない・分からないことがあれば、その場で看護師に伝える。
STEP3体温・全身の様子看護師
  • 体温を測る。37.5℃以上なら接種できないので、すぐ医師に報告する。
  • 顔色・きげん・呼吸の様子・発疹(ぶつぶつ)がないかを見る。
  • 今日打つワクチン名と本数を保護者に口で言ってもらい、思いちがいがないか確認する。
STEP4予診(問診と診察)医師
  • 問診票で、これまでの病気・アレルギー・けいれんの経験・免疫の状態・飲んでいる薬を確認する。
  • 診察して、打ってよいかを判断する。
  • 同時接種の本数と場所を決め、カルテに「同時接種が必要と判断」と書く。
  • 保護者に、本数・場所・起こりうる副反応・接種後30分待つことを説明し、同意を確認する。
STEP5ワクチンの準備看護師
  • 冷蔵庫から出すとき、①ワクチン名 ②有効期限 ③ロット番号(製造番号) ④見た目(にごり・異物・色の変化)を確認する。
  • 1ワクチンに1本の注射器・1本の針。混ぜない。
  • 溶かす必要があるもの(MR・水痘・おたふく・BCG など)は、専用の液で決まった量どおりに溶かす。溶かしたら原則30分以内に使う。
  • 注射器にワクチン名のラベルを付けるか、トレイを区切り、どれが何か目で分かるようにする。
STEP6打つ場所を決める看護師
  • 下の「打つ場所」の表に従い、年齢と本数から場所を決める。
  • 同じ場所に2本打つなら2.5cm以上はなす。
  • BCGはほかのワクチンと必ず別の腕にする。
  • 決めた場所を、打つ前にもう一度声に出して確認する。
STEP7接種する看護師・医師
  • 打つ直前に、患者さんの氏名・ワクチン名・場所を声に出して確認する(3回目の確認)。
  • アルコール綿で消毒し、乾いてから打つ。
  • 決めた順番で打つ。痛みの強いもの(PCV〈小児用肺炎球菌〉・シングリックスなど)を最後にすると、子どもの負担が少ない。
  • 打ったあとはもまずに、軽く押さえる(BCGは乾くまでさわらない)。
STEP8記録する看護師
  • ワクチン名・ロット番号・打った場所(左右・上腕か太ももか)・時刻を、カルテと母子健康手帳の両方に書く。
  • 同時接種では、どのワクチンをどこに打ったかを必ず分けて書く(副反応の原因を見つけるために欠かせない)。
STEP9接種後30分の見守り
  • 接種後30分は院内で待ってもらう。少なくとも30分は帰さない。
  • 重いアレルギー反応(アナフィラキシー)の多くは、この30分以内に起こる。
  • スタッフの目が届く場所に座ってもらい、5〜10分ごとに様子を見る。
  • 思春期以降(とくにHPV)は、気を失って倒れるおそれがあるので、必ず座るか横になって打ち、30分は立たせない。
STEP10説明・次回予約看護師・受付事務
  • 帰宅後の注意(下の「説明」)を、口頭と紙の両方で渡す。
  • 次に打てる日を計算して予約する。注射生ワクチンを打ったら「4週間後の同じ曜日以降」。
  • 当日のお風呂はOK。打った場所を強くもまないことを伝える。
  • 何かあったときの連絡先(診療時間内・時間外)を伝える。
接種後 30分 院内で待ってもらう 目の届く場所に座る 5〜10分ごとに様子を見る
STEP9:重いアレルギー反応の多くは30分以内に起こります。

第6章打つ場所と打ち方

打ち方どこに入れる針の角度主なワクチン
皮下注射皮膚のすぐ下の脂肪の層45度(またはつまみ上げて90度)子どもの定期接種の多く/インフルエンザ/MR・水痘・おたふく/帯状疱疹の生ワクチン
筋肉内注射その下の筋肉の中90度(垂直)HPV/シングリックス/新型コロナ/RSウイルス/A型・B型肝炎(製剤による)
経皮(管針法)皮膚の表面にスタンプ―BCGのみ

同じワクチンでも、製剤によって皮下か筋注かが違うことがあります。必ず添付文書と院内の指示書を確認します。

赤ちゃん 太ももの前の外側 肩の近く× 学童〜大人 ●筋注:三角筋の中央 ○皮下:後ろ側の下1/3
覚え方:赤ちゃんは「ふともも」、大きい子と大人は「うで」。本数が多いときは、ふとももを優先。
生後2か月〜1歳未満太ももの前の外側(大腿前外側部)。筋肉が厚く広いので何本も打てて、神経や血管を傷つけにくい。
1歳〜小学校入学前太ももの前の外側が基本。本数が少なければ上腕の外側でもよい。
学童〜大人・高齢者上腕。皮下は上腕の後ろ側(伸側)の下1/3、筋注は三角筋(肩の筋肉)の中央。
やせている高齢者三角筋の筋肉の量に注意。必要なら太ももの前の外側。筋注で骨に当たらないよう針の長さを選ぶ。

同時接種の場所の分け方

2.5cm以上 =指2本分以上
はなす理由:腫れが重なって強くならないように。どのワクチンの反応か見分けられるように。

例:赤ちゃん・4本の場合

順番ワクチン場所
1本目五種混合右の太もも(前外側の中央あたり)
2本目小児用肺炎球菌右の太もも。1本目から2.5cm以上ずらす(ひざ寄りか頭側)
3本目B型肝炎左の太もも
4本目ロタウイルス(飲む)注射ではないので場所は不要。最初に飲ませてもよい

例:大人・3本の場合

順番ワクチン場所
1本目インフルエンザ右上腕(皮下)
2本目新型コロナ左上腕・三角筋(筋注)
3本目シングリックス(筋注・反応が強いので最後)右上腕(1本目から2.5cm以上はなす)または左の太もも

BCGの特別ルール

BCG 2か所を強く押す 反対の腕 ほかのワクチン

打ってはいけない場所・さける場所

上腕の上のほう(肩の関節に近い所)肩関節のまわりの炎症(SIRVA)や神経を傷つけるおそれ
おしり坐骨神経を傷つけるおそれ。免疫のつきも悪い
湿疹・アトピー・傷・やけどがある所感染や反応が悪くなるおそれ
血管や神経が通る所・関節の上傷つけるおそれ
リンパ節郭清(リンパ節をとる手術)をした側の腕、透析シャントのある腕腫れや感染のおそれ。反対側を使う

第7章打てない人・注意する人

判断は必ず医師がします。迷ったら必ず医師に確認します。

打てない(禁忌)…すべてのワクチン

  • はっきりした熱がある(37.5℃以上)
  • 重い急性の病気にかかっている(治ってから打つ)
  • そのワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある
  • そのほか、医師が不適当と判断した

生ワクチンだけ、さらに打てない

  • 妊娠している(可能性がある)
  • 免疫のはたらきが落ちている(生まれつきの免疫不全、白血病・悪性リンパ腫の治療中、免疫抑制薬・生物学的製剤を使用中、高用量ステロイドを全身に使用中、HIVで免疫が落ちている など)
  • 最近、輸血や免疫グロブリン製剤を使った(下の表の期間をあける)
高用量ステロイドの目安:プレドニゾロン換算で1日20mg以上(子どもは2mg/kg/日以上)を14日以上使っていると、免疫が落ちた状態とみなします。やめてから1か月以上あけて生ワクチンを検討します。吸入・塗り薬・関節への注射のステロイドは当てはまりません。

輸血・免疫グロブリン製剤のあとの「注射の生ワクチン」(不活化は制限なし)

使った製剤あける期間
輸血・血漿製剤3か月以上
ふつうの量の免疫グロブリン製剤3か月以上
麻しんを含むワクチン(MR・麻しん)を打つとき6か月以上
川崎病などの大量免疫グロブリン療法のあと6か月以上

これらの製剤には抗体が入っているので、生ワクチンのウイルスが増えられず、免疫がつきません。

注意して打つ人(打てるが慎重に)

心臓・腎臓・肝臓・血液の病気、発育の障害などで治療中主治医の意見を確認する
前回の接種で2日以内に熱・全身の発疹などアレルギーを疑う症状が出た医師が個別に判断。接種後の見守りの時間をのばす
けいれんを起こしたことがある最後の発作からの期間と原因を確認。多くは接種できる
免疫不全と診断されている/近い家族に免疫不全の人がいる生ワクチンは専門医と相談
卵アレルギーインフルエンザワクチンは原則接種できる。重いアナフィラキシーを起こしたことがある場合だけ相談
ゼラチン・抗菌薬(カナマイシンなど)のアレルギーその成分を含む製剤か確認する
血が止まりにくい(血友病・血をさらさらにする薬)筋注はさけて皮下注に。細い針を使い、5分以上押さえる
けいれん・失神を起こしやすい思春期の人横になって打ち、30分は立たせない

生ワクチンを打ったあとに伝えること

院内ルール取り違えを防ぐ・ワクチンの保管

1 2 3 受付 予診票と 母子手帳 準備 名前・期限 ロット 打つ直前 氏名・ワクチン 場所を声に 「〇〇さん、五種混合、右のふともも」
指さし呼称:指をさして声に出す。だまって確認しない。

取り違えを防ぐ5つのルール

  1. ダブルチェックを3回:受付で予診票と母子健康手帳を照らし合わせる/準備でワクチン名・期限・ロットを確認/打つ直前に氏名・ワクチン名・場所を声に出して確認。
  2. 指さし呼称:指をさして声に出す。だまって確認しない。
  3. 1人1トレイ:1人分をまとめて1つのトレイにのせる。ほかの患者さんの分と同じ台に置かない。
  4. 溶かしたあとの管理:溶かした時刻を書き、原則30分以内に使う。使わなかったものは捨てる。
  5. その場で記録:打った本数と場所はその場で記録。あとでまとめて書かない。
2〜10℃ 中段に置く 扉のポケット× 凍らせない 温度は朝・夕の 1日2回記録

第8章副反応(ワクチンで起こる体の反応)

レベル中身どれくらい対応
① よくある、打った所の反応赤み・腫れ・痛み・しこり数%〜50%くらい冷やす。数日で消える。様子を見てよい
② よくある、全身の反応熱・だるさ・きげんが悪い・頭痛・筋肉痛数%〜30%くらい解熱鎮痛薬で対応できる。水分をとる
③ まれな、重い反応アナフィラキシー・けいれん・脳炎や脳症・血小板減少性紫斑病 など数万〜数百万回に1回すぐに医療対応。副反応疑い報告の対象

いつ出る? ここが生ワクチンとのいちばんの違い

当日 2日 1〜2週 3週 不活化・mRNA 当日〜翌日(mRNAは〜2日) 生ワクチン 数日〜3週間後
翌日の熱→不活化の反応らしい。1〜3週間後の熱や発疹→生ワクチンの反応らしい。だから「何を・いつ・どこに打ったか」の記録が大事。

ワクチン別に知っておくこと

ワクチン主な副反応出やすい時期注意点
MR(麻しん風しん)熱(約20〜30%)・発疹・まれに血小板減少性紫斑病5〜14日後(紫斑病は3週以内)熱性けいれんを起こしたことがある子は事前に説明
水痘発疹(数個)・熱1〜3週後水ぶくれがたくさん出たら受診
おたふくかぜ耳の下の腫れ・まれに無菌性髄膜炎2〜3週後強い頭痛・吐くときは受診
BCG打った所の赤み・膿・かさぶた、わきのリンパ節の腫れ2〜4週後(正常な反応)10日以内の反応はコッホ現象。受診・報告
ロタウイルス下痢・吐く・きげんが悪い・まれに腸重積症1〜2週(とくに初回後7日以内)激しく泣く・吐く・イチゴゼリーのような血便は救急受診
五種/四種混合打った所の腫れ(ひじや肩まで広がることも)・熱当日〜翌日腫れが強くても多くは数日でよくなる
小児用肺炎球菌熱(わりと多い)・打った所の腫れ当日〜翌日痛みが強い。同時接種では最後に打つ
日本脳炎熱・打った所の反応・ごくまれにADEM(急性散在性脳脊髄炎)当日〜翌日接種後に意識がおかしい・けいれんは緊急受診
HPV打った所の痛み・失神(気を失う)直後〜30分必ず座るか横になって打つ。30分は立たせない
インフルエンザ打った所の腫れ・熱・まれにギラン・バレー症候群当日〜翌日卵アレルギーでも原則打てる
新型コロナ打った所の痛み・熱・だるさ・まれに心筋炎当日〜2日若い男性の胸の痛み・動悸は受診をすすめる
シングリックス(帯状疱疹)打った所の痛み(約8割)・熱・筋肉痛・だるさ当日〜2日反応が強いことを前もって説明。翌日休めるよう配慮
高齢者の肺炎球菌(PPSV23)打った所の強い赤み・腫れ当日〜翌日5年未満での再接種は強い反応が出るのでさける

重い副反応(合併症)の見分け方

合併症症状起こる時期頻度の目安
アナフィラキシーじんましん・顔や唇の腫れ・ゼーゼー・息苦しい・血圧が下がる接種後4〜30分(ほぼ30分以内)約100万回に1回
血管迷走神経反射(失神)顔が真っ白・冷や汗・気分が悪い・気を失う直後〜数分思春期以降でわりと多い
けいれん全身のひきつけ当日〜数日まれ
ADEM(急性散在性脳脊髄炎)熱・頭痛・けいれん・意識がおかしい・まひ接種後1〜4週約100万回に1回未満
ギラン・バレー症候群手足に力が入らない・しびれ接種後1〜4週きわめてまれ
血小板減少性紫斑病青あざ・点のような出血・鼻血が止まらない接種後3週以内MRで約100万回に1回
腸重積症急に激しく泣く・吐く・血便・おなかのしこりロタ初回後7日以内が多い10万人に1〜数人
無菌性髄膜炎強い頭痛・くり返し吐く・熱・首がかたいおたふく接種2〜3週後数千人に1人くらい

最重要アナフィラキシーと失神の見分け方・対応

打った直後に具合が悪くなる原因は、ほとんどがこの2つです。対応がまったく違うので、必ず見分けます。

アナフィラキシー(重いアレルギー)血管迷走神経反射(いわゆる脳貧血)
起こる時間接種後4〜30分(数分後が多い)直後〜5分以内
皮膚じんましん・赤み・かゆみ・唇や目の腫れ(8〜9割で出る)真っ白になる。じんましんは出ない
脈速い遅い
呼吸ゼーゼー・声がかれる・息苦しい・のどがつまる感じ呼吸の異常はない
おなか腹痛・吐く・下痢吐き気が出ることはある
寝かせると治る?治らない。あおむけのまま薬が必要治る。横にして足を上げれば数分で回復
対応すぐアドレナリン筋注+救急要請横にして足を上げ、様子を見る。回復を確かめて帰宅
迷ったら、アナフィラキシーとして対応失神だったのにアドレナリンを打っても害は小さい。でもアナフィラキシーにアドレナリンを打たないと、命に関わります。

アナフィラキシーが起きたら

あおむけ+足を高く 苦しければ上半身を起こす 急に立たせない・座らせない 太ももの 前の外側に筋注
手順1応援を呼ぶ

「アナフィラキシーです」と大きな声で伝え、医師と応援のスタッフを集める。救急カートとAEDを持ってくる。

手順2体の向き

あおむけに寝かせ、足を高く上げる。息が苦しいときは上半身を起こす。急に立たせたり座らせたりしない(急変の原因になる)。

手順3アドレナリン筋注

アドレナリン(ボスミン注1mg/mL)を0.01mg/kg、太ももの前の外側に筋肉注射する。子どもは最大0.3mg、大人は0.3〜0.5mg。効き目が足りなければ5〜15分あけてくり返してよい。

手順4救急要請

119番に通報し、搬送の手配をする。

手順5全身の管理

酸素投与、点滴のルート確保と輸液、血圧・脈拍・SpO2(血液中の酸素)のモニターを行う。

手順6記録

起きた時刻・症状・使った薬と時刻・バイタル(血圧や脈など)の変化を、時間の順に記録する。

アドレナリンの量(1mg/mL製剤)

体重量液の量
10kg(1歳ごろ)0.1mg0.1mL
20kg(6歳ごろ)0.2mg0.2mL
30kg以上・大人0.3〜0.5mg0.3〜0.5mL

救急カートに置くもの(各院で毎月点検)

第9章患者さん・保護者への説明

打つ前に必ず伝える

帰る前に渡す説明(要点)

すぐ受診が必要なサイン(保護者に必ず伝える)

こんなときどうするか
息が苦しそう・ゼーゼー・顔や唇が腫れた・全身にじんましんすぐに救急要請(119番)
けいれんした・意識がおかしい・呼びかけへの反応がにぶいすぐに救急要請(119番)
(ロタのあと)赤ちゃんが激しく泣いたりやんだりをくり返す・吐く・イチゴゼリーのような血便すぐに受診(腸重積症のうたがい)
38.5℃以上の熱が2日以上続く・ぐったりして水分がとれない診療時間内に受診
打った所の腫れがどんどん広がる・強い痛みが続く・膿が出る診療時間内に受診
青あざや点のような出血が増えた・鼻血が止まらない診療時間内に受診
BCGのあと10日以内に、打った所が赤く腫れて膿をもった診療時間内に受診(コッホ現象のうたがい)

第10章記録と報告・間違い接種が起きたら

診療録(電子カルテ)ワクチン名・製造販売業者名・ロット番号・接種量・場所(左右・上腕か太ももか)・打ち方(皮下か筋注か)・時刻・打った人の名前・同時接種が必要と判断したこと
母子健康手帳ワクチン名・接種日・ロット番号・医療機関名と医師名
予診票医師の署名・同時接種の本数・保護者の同意
温度記録簿冷蔵庫の温度(1日2回)

同時接種では、どのワクチンをどこに打ったかを必ず分けて記録します。副反応が出たとき、原因のワクチンを見つけるただ一つの手がかりです。

副反応疑い報告

健康被害の救済制度

間違い接種が起きたら

かくさず、すぐに報告するこれがいちばん大事です。
  1. 報告:患者さん・保護者に正直に説明する。
  2. 健康への影響をみる:医師が影響の有無を判断し、必要な観察・処置をする。
  3. 打ち直すか決める:間隔が短すぎた(注射生→注射生が27日未満など)ときは無効接種なので、正しい間隔をあけて打ち直す。費用の負担は院長・自治体と調整する。
  4. 自治体に報告:定期接種の間違いは、市町村の予防接種担当課に報告する。
  5. 再発防止:何が起きたか・なぜ起きたか・どう防ぐかを記録し、全院で共有する。

よくある間違い:間隔を「1か月後」で計算する/ワクチンの取り違え(帯状疱疹の生ワクチンとシングリックスなど)/量の間違い(子ども用と大人用)/有効期限切れのワクチンを使う/対象年齢外の人に打つ

付録A接種当日チェックリスト

接種室に貼り、毎回上から順に確認します。

受付

接種前

準備

接種

接種後

付録Bよくある質問

同時接種すると、副反応も何倍にもなる?

なりません。打った本数の分だけ、それぞれの場所に赤みや腫れが出ることはありますが、1か所あたりの強さや、重い副反応の起こりやすさは1本ずつ打つときと同じです。

生ワクチンどうしの同時接種は本当に大丈夫?

大丈夫です。インターフェロンが出るまで数日かかるので、同じ日ならじゃまし合いません。制限があるのは「日をずらす」ときだけ(注射の生ワクチンどうしは27日以上)。同時に打てば待つ必要がありません。

MRと水痘を同時に打てなかった。次はいつ?

どちらも注射の生ワクチンなので27日以上あけます。「4週間後の同じ曜日以降」と案内します。

ロタを飲んだ日に、注射の生ワクチンを打てる?

打てます。ロタは飲む生ワクチンなので27日ルールの対象外です。同じ日でも翌日でもかまいません。

フルミストは生ワクチンだから4週間あける?

あける必要はありません。生ワクチンですが注射ではないので、前後の間隔の制限はありません。特に間違えやすい点です。

新型コロナワクチンは他のワクチンと何日あける?

あける必要はありません。令和6年4月以降、他のワクチンとの間隔の制限はなくなりました。インフルエンザとの同時接種もできます。

「同じ日に5本は多すぎない?」と言われた

医学的な上限はありません。1本ずつだと接種が終わらず、その間に病気にかかる危険が続きます。ただし保護者が不安なら無理をせず、重症化しやすい病気を優先して分けてもかまいません。

接種後に熱が出たら、解熱剤を飲ませてよい?

ふだん使っている解熱鎮痛薬を通常の量で使ってかまいません。熱が出る前にあらかじめ飲ませることはすすめません。

接種した日にお風呂に入ってよい?

入ってかまいません。打った所を強くこすらないでください。

卵アレルギーでもインフルエンザワクチンを打てる?

含まれる卵の成分はごくわずかで、原則打てます。卵で強いアナフィラキシーを起こしたことがある場合だけ、医師に相談します。

妊娠中でもワクチンを打てる?

生ワクチン(MR・水痘・おたふくかぜなど)は打てません。不活化ワクチンは打てます。RSウイルスの母子免疫ワクチンは、妊娠28週0日〜36週6日の間に打ちます。

生ワクチンのあと、いつから妊娠してよい?

接種後2か月間は妊娠をさけてください。

接種の間隔があいてしまった。最初からやり直し?

やり直す必要はありません。続きから打てば免疫はつきます。ただし対象年齢を過ぎると定期接種(公費)の対象外になることがあるので、早めに受診してもらいます。

医療法人博清会 予防接種マニュアル「生ワクチン・不活化ワクチンの同時接種」第1版(2026年8月作成/作成:予防接種委員会・承認:理事長/次回見直し:毎年4月、定期接種の制度改正時はその都度)の要約です。
このページは要点をやさしくまとめたものです。正式版(PDF)は「博清会マニュアル(正式版)」から開けます(メニューからも開けます)。実際に使うときは、最新の厚生労働省の通知・自治体からの案内・各ワクチンの添付文書も確認してください。気づいた点は、そのままにせず予防接種担当医か院長へ。

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